クレートは必要？

クレートはなんだか窮屈でかわいそう...と感じる方は多いかもしれません。けれども、いつでも広々とした空間にいるのが犬にとってベストな状態とは、必ずしも言い切れないようです。

平原で暮らしていた犬の祖先は、静かで薄暗く体が収まるくらいの穴を掘り、そこで眠ったり子育をしたりしていました。ですから、巣穴のような作りのクレートは安全な場所と本能的に認識し、慣れると好んで入るようになります。クレートは犬にとっての落ち着ける寝床のような存在なのです。

クレートが使えるようになると、次のようなメリットもあります。

移動が楽

落ち着ける寝床ごと移動ができるため、公共の乗り物を利用するときや病院、旅行先でのストレスが軽減される。
※公共の交通機関を利用する際は必ず乗車条件を確認しましょう。

動きの制限

手術後やケガを負ったときなど、クレート内で過ごさせることで安静な状態にしておける。

分離不安の軽減

留守番中、安心できる場所で過ごすことで不安が軽減される。
また、短時間の留守番であれば、扉を閉めることで誤飲などの危険を防ぐことができる。

災害時

避難時に愛犬を歩かせないことで、足元のケガを避け、愛犬がパニック状態になっても迅速な行動がとれる。また、避難先で愛犬が使い慣れている専用のクレートを使用することでストレスの軽減に役立つ。
※同室で過ごすことができるかは、各避難所によります。

車に乗るとき

万が一の事故や急ブレーキの時に安全を確保できる。また、中～大型犬の場合は荷台に設置することで、愛犬の活動による安全運転の妨害を防ぐことができる。

クレート・ケージ・サークルの違い

愛犬の落ち着ける場所としてのハウスには、いくつかの特徴がありますが、クレートは「持ち運びが楽にできる」という点が大きな違いです。

もし、少し長めのお留守番に使用するなど、家の中での利用が主な目的の場合は、ケージやサークルのほうが使いやすいかもしれません。

・ケージ

ケージは、飛び出す心配がないので特に活動的な犬種に向き、寝る場所とトイレスペースが分けられている商品もある。屋根付きなので、落下物の危険を避けられます。

・サークル

サークルは、一見ケージにそっくりなものもありますが、ジョイント材を用いて形を変えられるものもありレイアウトの自由度が高く便利です。柵とジョイント材を使って自作する飼い主さんもいます。犬種によっては飛び出しや縁に手をかけるのが習慣化されて困った行動に繋がる可能性もあるので注意が必要です。

失敗しないクレートの選び方

次に、それぞれの愛犬に合ったサイズ選びのポイントとタイプ別クレートの特徴をご紹介します。

クレートのサイズを選ぶ方法

1.愛犬の体の大きさを測る

・犬を立たせた状態で床から頭までの体高を測る
・伏せた状態で前足先から尻尾の付け根までの長さを測る

2.クレートの基準サイズを把握する

クレートの高さは体高のプラス5㎝程度、奥行きは伏せた長さと同程度が基準のサイズとなります。このサイズであれば、クレート内でも「お座り」「伏せ」「方向回転」が可能なため、動きが不自由になることはなく安心して過ごすことができます。

3.使用目的に合ったサイズを選ぶ

ぴったりのサイズのクレートが見つかるとよいですが、希望のサイズがないことも。困ったときはメインとなる使用目的を決めて選んでみることをおすすめします。

主に室内で使用する場合:
少し大きめを選びます。マットを敷いたり毛布を使用することで広さを調整しましょう。少し大きめの方が、風通しがよく清潔で快適な空間を保ちやすく、病気や介護などで安静が必要な際にはフード皿をクレート内に置くこともできます。

主に移動用に使用する場合：
少し小さめを選びます。移動時の揺れを考えると、少しタイトな方が体が安定して安心です。またスペースを取らず重量も軽くなる利点もあります。犬の体はあんがい柔軟性に富んでいるので、回転できる余裕さえあれば少し丸まった状態でも快適に休むことができます。

クレートの種類

・ハードタイプ

プラスチック製のものが多く、汚れてもお手入れが楽で清潔です。丈夫な作りのため災害時や移動時にも安心。

・ソフトタイプ

折り畳み式もあり、軽量で持ち運びに便利です。移動用にするには安全性に欠けるため、室内や外出先での使用に適しています。

・キャスター付き

手持ちで運べない中～大型犬の移動に。キャスターが取り外し可能なタイプは、室内ではキャスターを取り外して使用すると安全に使えます。

・防災用

キャリーバッグに折り畳み式のソフトケージが付属されたタイプ。ケージ部分を広げることで愛犬専用のスペースを作ることができ、長時間使用のストレスを少しでも軽減させることが期待できます。また、軽量でリュックやショルダーとしても対応可能で、災害時は特に両手が空くので便利です。

クレートに慣らす3ステップ

クレートをこれから使い始める場合、あせってはいけません。クレートの中は安心できる場所と覚えて、飼い主がそばにいなくてもゆっくり休んだり寝たりできることが目標です。これは社会化のひとつでもあります。
はじめからすんなりできる犬は少ないです。根気よく無理なく愛犬のペースで慣らしていきましょう。上手に出来たときには愛犬が喜ぶご褒美もお忘れなく。

ステップ１：クレートを快適な場所に設置

クレートを家の静かで落ち着いた場所に置きます。
クレートの中に柔らかいベッドや毛布を敷いて、快適な空間を作ります。

ステップ２：クレートに良いイメージを持ってもらう

クレートの中におやつやおもちゃを入れて、犬が自分から入るように誘導します。
クレートに入ったら褒めたり、おやつをあげたりして、愛犬の好む体験をさせます。

ステップ３：短時間のクレート滞在から始める

最初は短時間（数分程度）だけクレートに入れて、徐々に滞在時間を延ばします。
愛犬がクレートに慣れてきたら、ドアを閉めてみますが、最初は短時間にして、徐々に延ばしていきます。

いずれも愛犬のペースで行ってくださいね。怖がり、警戒心が強い場合は、クレートの扉や上部箸を外して、底の部分だけを用いて練習するところから始めてみてください。

まとめ

クレートが愛犬の落ち着ける場所になると、いざという時や困ったときにも、とても心強い存在になりますね。あなたと愛犬のライフスタイルや目的に合った、最適なクレート選びの参考になれば幸いです。